POPSとオペラの違いとは?歌えない本当の原因と“頭式呼吸”の新常識【元Sonyプロ直伝】

「ボイトレしてるのに歌がうまくならない…」そんな悩みを抱えていませんか? 実はその原因、POPSとオペラの発声の違いに気づかず、間違ったボイトレをしていることにあります。 本記事では、Sony Music出身のプロデューサーが、“歌えない本当の原因”と「頭式呼吸」という新しい発想を徹底解説します。

POPSとオペラの発声法の違いとは?

まず前提として、POPSとオペラの発声はまったく違うものです。

オペラの発声は、17世紀のヨーロッパで発展した「ホールで響かせる」ためのもの。 マイクがない時代に、声を遠くまで飛ばすための技術であり、体を楽器のように使う方法です。

一方、POPSはマイクを前提とした現代的な歌唱法。声量よりも「言葉のニュアンス」や「個性」が重視されます。 にもかかわらず、日本ではオペラ式の発声をPOPSにも適用するボイストレーニングが主流となっています。

その結果、多くの人が本来の声を失い、「自分は歌が下手なんだ」と誤解してしまうのです。

歌えない原因は「間違った呼吸」と「ボイトレの常識」

ネットで「呼吸は肺でするの?お腹?」と検索する人が多くいます。 しかし、これはそもそも問いの立て方がズレていたのです。

人間は本来、頭部全体で呼吸する生き物なのです。 これは「頭式呼吸(とうしきこきゅう)」と呼ばれる考え方で、鼻や口だけでなく、 おでこ、頬、アゴ、鼓膜の裏、つまり頭部全体を“通気構造”として使う感覚が鍵になります。

天然ミックスボイスの持ち主たちは、まさにこの「頭の通り」を自然に使っている人たちです。 彼らが特別な訓練をしていないにも関わらず歌える理由は、呼吸構造が自然なままだったからです。

ボイストレーニングで喉を壊す?日本人に多い危険なケース

「鼻は万病の元」という言葉をご存知でしょうか? 鼻炎、副鼻腔炎、無呼吸症候群など、日本人の多くが鼻の不調を抱えています。

こうした状態で、無理に発声訓練をすると喉に過度な負担がかかり、声が出なくなる人もいます。

一般的なボイストレーニングを続けているのに、なぜか調子が悪くなる……という場合は、 まず呼吸器や鼻、そして頭部の通りを見直す必要があるのです。

POPSに「歌い方」はいらない。求められるのは“個性”

オペラ歌手は「正しい音」を再現するために、音の完成形を追求します。 つまり、楽器のように体を調律し、理想的な“歌い方”をマスターしていきます。

しかしPOPSは真逆です。その人だけの声、その人だけの表現が価値になります。

だからこそ、「歌い方」など必要ないのです。むしろ「歌い方を学ぶこと」で自分の声を失ってしまう可能性すらあります。

POPSに必要なのは、“生まれつきの声”を取り戻すこと

プロのボーカリストやアーティストの多くが「ボイトレしていない」と言うのはなぜか?

それは彼らが“生まれつき歌える身体”を持っていたからです。

私たちが本当に目指すべきは、そういった“自然な身体”に戻ること。

ボイストレーニングで何かを「足す」のではなく、 「もともと持っていたものを取り戻す」ことが、POPSのための本当のボイトレなのです。

その第一歩が、「頭式呼吸」に気づくことから始まります。