こんにちは。元ソニーのプロデューサー、平山です。
今日は、みなさんが長いあいだ信じてきた「歌の基礎=腹式呼吸・支え」という考えが、実は大きなまちがいだった――というお話をしたいと思います。
なぜ、その思い込みがポップスを歌う人にとって大きな壁になり、さらには健康を壊す原因にまでなってしまうのか。
そして、なぜ多くの人が「歌えない」と感じてしまうのか。
その本当の理由を、私自身の経験もふまえて、じっくりお伝えしていきます。
歴史の背景
まず、歴史から見ていきましょう。
じつは日本人が「歌い方」と信じてきたもののルーツは、意外にも明治時代の学校教育にあります。
当時の文部省は西洋文化を積極的に取り入れ、その一環として「唱歌教育」を導入しました。そこに混ざったのが、イタリアのオペラ――ベルカント唱法です。
戦後にはイタリアの歌劇団が来日し、本格的なベルカント唱法が広まります。つまり、“腹式呼吸”や“支え”といった概念は、もともとクラシックの世界のもの。ポップスや現代音楽とは無縁だったのです。
ところが音楽教師やボイストレーナーは声楽出身。自分の知識をそのまま「基礎」として教えてしまった。こうして「腹式呼吸こそ基礎」という誤解が、日本中に広まってしまいました。
何がまちがっているのか
では、なぜこれが問題なのか。
ひとつは「支え」という言葉のあいまいさにあります。
「おなかで支えて声を出す」――よく聞く表現ですが、実際には誰も正しく説明できない。結局、「おなかを固めて声を押し出す」と理解してしまう人が多いのです。
するとどうなるか。自然な呼吸が壊れ、のどや体がガチガチに固まります。声の響きは失われ、息の流れも止まり、歌に必要なニュアンスが消えてしまう。
これは単に歌が下手になるだけではありません。体を締め付け続ける結果、健康そのものをむしばむのです。
実際に私自身も、腹式呼吸を続けた結果、歌えなくなっただけでなく、睡眠時無呼吸症候群という重大な病気にまでなってしまいました。
歌えない本当の理由=副鼻腔炎
ここで、さらに踏み込んで考えましょう。
なぜ「歌えない」ひとがこんなに多いのか。
私がたどり着いた答えは「副鼻腔炎」です。
鼻や副鼻腔に炎症があると、ひたい・ほほで呼吸の感覚を失ってしまいます。本来なら顔の奥や頭の中にまで空気の流れを感じられるのに、その感覚が失われてしまうのです。
年齢とともに炎症は広がり、おでこ、ほほ、のど、胸、肺と、呼吸の通り道が固まっていきます。私も気づけば呼吸が浅くなり、睡眠時無呼吸症候群に苦しむようになりました。
医学の研究でも、副鼻腔炎が改善すると「声の質や満足度」が上がると報告されています。つまり、歌えないのは努力不足ではなく、体の炎症や呼吸の異常が原因なのです。
人間は本来、歌える動物です。健康な呼吸があれば、特別な発声法を学ばなくても2時間のライブを自然に歌い切れる。
それが本来の姿です。逆に言えば、まちがった発声を続けると、歌うことそのものが健康を壊していくのです。
自然な呼吸を取りもどす方法
では、どうすればいいのか?
答えはシンプル。「歌い方」を直すのではなく、「呼吸を回復すること」です。
私が提案するのは「とうしき呼吸」。その基本のひとつが「顔うら洗浄法」です。
やり方はこうです。おでこ、ほほ、あごを、鼻うがいで“裏から洗う”ように意識してください。これは実際に水や油で洗っていきます。そして呼吸を通じて顔の奥を清めるイメージです。
うまくいくと、呼吸によって体にたまった老廃物が少しずつ排出され、頭の奥や鼻の通りがすっきりしていきます。
固まっていた呼吸の感覚が戻り、健康な息づかいがよみがえる。それが自然な歌声を取りもどすための第一歩です。
まとめ
まとめます。
明治以来の「腹式呼吸=歌の基礎」という常識は、実はポップスにとって大きなまちがいでした。
歌えない本当の理由は、技術の不足ではなく、副鼻腔炎などの炎症が呼吸を妨げていること。
そしてその結果、歌うこと自体が健康を壊す行為になってしまっていたのです。
だからこそ、ポップスを歌うためには、まず呼吸を健康に戻し、自然な声を取りもどすことが欠かせません。
歌は「歌い方」ではなく、「人間が本来もっている呼吸」から始まります。
