【体験談】睡眠時無呼吸症候群を治した私の方法【いびき・とうしき呼吸】2

私がソニーミュージックを離れたのは、今から21年前、40歳のときでした。
もともとはシンガー志望で、22歳のときにはバンドのボーカルとして全国大会にも出場していました。

しかし、優勝できなかった理由を「歌の基礎=腹式呼吸ができていないからだ」と思い込み、ボイストレーニングに取り組むようになったのです。

けれど、ポップスの人間なら誰でも同じように感じるはずです。――なんだか意味のない音程練習や発声練習ばかりで、「これをやって何になるのだろう?」と。
それでも歌が安定しない私は、たくさんのボイストレーニング本を買い込み、必死に練習しました。

ところが、どの本を読んでも内容はほとんど同じ。別の本を買っても同じことしか書かれていないのです。
1990年代は情報が少なく、今のように自分で調べられる時代ではありませんでした。

現代はAIの発達で、例えば「ミックスボイスの始まりは?」と質問すれば――

日本での普及(1990年代〜2000年代)
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、アメリカのボイストレーナーやミュージカルメソッドが日本に紹介され、「ミックスボイス」という言葉が一般の音楽教室でも使われるようになりました。

と答えてくれます。

さらに「ボイストレーナーから始まったの?」と聞けば、

ミックスボイスは直接的にはボイストレーナー発祥ではなく、もともと声楽(クラシック)の世界で使われてきた発声技術がルーツ。
ただ、日本で『ミックスボイス』という言葉が急速に広まったきっかけは、確かにボイストレーナーたちの発信です。

と返してくれるでしょう。

つまり、日本に「ミックスボイス」という言葉が入ってきたのは1990〜2000年代、海外のミュージカル発声やゴスペル系の発声法を学んだ日本人ボイストレーナーが、自分の生徒に紹介したのが始まりでした。
J-POPやアニソンの高音需要と相まって、「ポップス高音発声の必須技術」として急速に広まったのです。

しかしその過程で、クラシック由来である説明は省かれ、「ポップス専用の技術」のように誤解されていきました。


私はプロの現場にいた人間なので、その裏事情を知っていました。
YouTubeの時代になると、ポップスの世界で事実とは違うことをボイストレーナーが言い出すようになり、私は反対していました。
なぜなら、私にはそれが「嘘」に思えたからです。

さらに、私自身がボイストレーニングによって歌えなくなるどころか、睡眠時無呼吸症候群にまでなってしまった経験があり、到底許すことはできませんでした。
プロのポップス現場ではそんなことは一切やっていませんし、芸能スクールで教えているのはオペラ歌手のようなクラシック出身者。私はそれを危険だと感じていたのです。

そんな経験があったので、私は知っていました――
「世界にはポップス専用の発声法など生まれていない」という事実を。

では、なぜプロが知らないことを、素人のボイストレーナーが知っているのか?
そんなことがあるはずがないでしょう。
だから私は真剣に反対しました。

しかし、ポップスの発声法そのものが存在しない以上、言い返すことができなかったのです。


そんな中、ソニーミュージックを退社する直前、私はある決定的な場面を目にしました。

それは、6人の女の子にJAZZを練習させ、デビューを目指すという企画のとき。
普段はマイクを持って歌っていたため気づけなかったのですが、そのときは生声で歌わせていたのです。

6人中3人――彼女たちは明らかにデビューできる実力を感じました。
そしてもう3人――残念ながらデビューは難しいと感じました。

その違いは一目瞭然でした。
デビューできると感じた3人は、鼻の高さから声が出ているように見えたのです。
一方、デビューは難しいと感じた3人は、はっきり口から歌っていたのです。

「これはおかしな発見だ。この謎を解けば、ポップスの発声法を作れる」
私はその瞬間、確信しました。

ソニーミュージックを退社してから

私は40歳のとき、ソニーミュージックを退社しました。
理由は、このまま放っておけばポップスが汚されてしまうと感じたからです。
そしてもう一つ――ポップス愛好家の人たちの健康が危ないと本気で思ったからです。

退社後、私は研究を続ける中で「共鳴」という現象を発見しました。
そこから少しずつ、ポップスにおける発声の方程式が見えてきたのです。

発見は一度にまとまって出てきたわけではありません。
時間をかけて、1つ1つ検証し、積み上げていきました。
そして、その方程式どおりにコントロールさせると――歌は明らかに変化していきました。

この研究には、おそらく15年はかかったと思います。

そして2016年、ついに転機が訪れます。
かつて歌えなかった人が、私が認めるほど見事に歌えるようになったのです。
さらに続けて、別の2人も同じように歌えるようになりました。

そこで私は、この3人に質問しました。

「どうして歌えるようになったの?」

すると、驚くことに3人は別々の場面で、まったく同じ答えをしたのです。

「頭が空っぽになっちゃった」

この瞬間、私は確信しました。
私が見つけた方程式と、この「頭が空っぽ」という感覚こそ、ポップス発声の核心だと。

そそして同時に、こうも感じたのです。
――これは睡眠時無呼吸症候群を治すヒントになるかもしれないと。

なぜなら、睡眠時無呼吸症候群には当時も今も決定的な治療法が存在しないからです。
当然です。日本医師会のホームページを見れば、「腹式呼吸のやり方」などと、明治時代から続く誤った呼吸法が堂々と掲載されているのですから。